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遺言を作って安心相続 ①遺言がないとこんなことに!

①遺言がないとこんなことに!

●遺産を残す人に子がいない場合

⇒夫婦で生活しており、子はいなかったところ、夫が死亡した。
 夫の親はすでに亡くなっているが、弟がいるため、相続人は、妻と弟である。
 3か月ほどして、夫の弟が相続人として持分を主張してきた。
 遺言がなかったため、結局、弟が、夫の遺産の4分の1を相続することとなった。
→子がおらず、夫の両親及び祖父母が既に亡くなっている場合、妻及び夫の兄弟が相続人となります。
 その相続分は、妻が4分の3、兄弟が4分の1ですが(民法900条)、兄弟には遺留分がないため(民法1042条)、遺言が作成されていれば、妻に全財産を相続させることができます。

⇒夫婦で生活しており、子はいなかったところ、夫が死亡した。
 夫の母とは、夫の生前から仲が悪く断絶状態になっていた。
 夫の母が、相続人として持分を主張してきて、調停で争うことになった。
 遺言がなかったため、結局、夫の遺産の3分の1を夫の母が相続することになった。
→子がいない場合、妻と夫の親が相続人となります(夫の両親ともが亡くなっていおり、祖父母が生存していれば、祖父母)。
 その相続分は、妻が3分の2、夫の親が3分の1です(民法900条)。
 親には遺留分がありますので、遺留分に配慮した遺言を作成しておくと良いでしょう。
 なお、当該事案の場合、夫の親の遺留分は6分の1となります。

●遺産をもらう人に兄弟がいる場合

⇒父は、不動産、株式、預金など、多くの財産を有していた。
 父の死亡後、2人の子(長男、次男)が、どちらがどの物件を相続するのか話し合ったが、折り合いがつかず、争いになった。
→遺産分割をするにあたっては、不動産や株式等の評価が問題となり、争いとなることが多くみられます。
 兄弟の争いを避けるため、多くの財産を有する者は、予め遺言を作成し、各相続人にどの財産を相続させるかを決めておくと良いでしょう。

⇒長男夫婦と同居していた父が死亡した(家は父名義)。
 父は、生前、長男夫婦に家を譲ると言っていたが、遺言を作成していなかった。
 次男が、相続によってその家について自分も持分を有していると主張してきた。
 結局、長男は、土地・建物を担保に借金して、弟に1500万円を支払う(代償分割)こととなった。
→生前に、家を譲ると言っていたとしても、遺言を作成していなければ、効力はありません。
 長男に家を譲りたい場合には、遺言を作成することが必要です。
 本事例の場合、次男には遺留分がありますが、次男の相続分が2分の1に対し、遺留分は4分の1ですので、遺言があれば、支払額は半分程度に収まったと思われます

●遺産を残す人が事業経営している場合

⇒父が株式会社を経営していた。長男は、長年にわたり父を手伝い、5年前からは、長男が代表取締役であった。
 次男、三男は、会社の経営には一切関与していなかった。
 長男は、父の死後、会社は当然自分が継ぐものと思っていた。
 しかし、遺言がなかったため、父が持つ株式が、長男、次男と三男に均等に相続されることになった。
 その結果、会社のことを何も分かっていない次男と三男が経営に口をだすようになり、経営がうまくいかなくなって、会社が倒産してしまった。

⇒亡くなった父は、個人事業として工場を経営していた。父が残した遺産は、ほとんど、工場とその底地の土地だけであった。
 相続人は、長男と長女であるところ、遺言がなかったため、相続をめぐって争いが生じ、長男は工場経営を望み、長女は、工場の売却を長男に求めている。
 結局、長男が長女に相当額を支払って、工場を取得したが、長男は資金繰りがつかず、工場を閉鎖せざるを得なくなってしまった。

→事業経営していた方が高齢になった場合、事業の継続のためには、遺言を作成しておくことが必要です。
 もっとも、事業承継は、事案によって様々な方法があります。また、多額の税金も絡んできます。
 早めに、専門家に相談することが必要です。

●疎遠になっている人が相続人になる場合

⇒父親が亡くなり、妻と長男だけが相続人だと思っていたところ、父と絶縁状態だった前妻の子が現れ、遺産分割を要求してきた。
 長期間をかけて、調停を行った結果、前妻の子は遺産の4分の1を相続することになった。
→このような事案では、自分の死後に、争いにならないよう、遺言を作成しておくことが必要です。
 誰に何を残すかを検討し、遺留分にも配慮しておく必要があります。

●世話をしてくれている人が相続人にならない場合

⇒妻に先立たれ、1人で生活をしており、近所に住む妹がその世話をしていた。長男は、遠方で住んでおり、殆ど帰ってくることはなかった。
 亡くなった後、遺言がなかったために、世話をしていた妹は何も得られず、長男が全ての遺産を相続した。
→世話をしてくれた妹に、遺産を残したい場合には、遺言を作成する必要があります。
 長男には、遺留分がありますので(遺産の2分の1)、遺留分に配慮した遺言を作成することが望ましいでしょう。

●相続人がいない場合

⇒生涯独身で独居を続けていたが、高齢となったため、心配した従兄弟が、時々、様子を見に来てくれていた。
 子もなく、兄弟もなく、親はすでに亡くなっており、相続人はいなかった。
 亡くなった後、相続財産管理人が選任されて手続きを行われ、結局、遺産は国庫に帰属することになった。
→従兄弟は相続人にはあたりません。お世話になった従兄弟や施設等に遺産を遺したい場合には、遺言を作成しておく必要があります。
 遺言がなければ、相続人不存在となり、最終的には、国庫に帰属することになります(民法959条)。
 なお、国庫への帰属の前に、特別縁故者への相続財産分与の制度はありますが(民法958条の2)、全額が分与される訳ではありません。

還暦なったら遺言作ろう
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遺言を作って安心相続 ②自分で遺言を作るのは間違いのもと!